【穿山甲】


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センザンコウ目(有鱗目・鱗甲目)センザンコウ科に属する哺乳類で、姿や食性はアリクイに似ているがアリクイには鱗がない。南米のアルマジロにも似ているが、アルマジロの鱗は甲羅状になっており防護が主たる役割だ。一方、穿山甲の鱗は縁が鋭い刃物のようになっており、これを立て尻尾を振り回して攻撃する。鋭い爪でアリやシロアリの巣を掘り出し、長い舌で捕食する。鱗を立て死んだふりをして、蟻が群がったところで鱗を閉じ、水に浮かべて捕食するという俗説もまことしやかに語られる。絶滅危惧種でワシントン条約によって捕獲が禁止された。古くから続いた漢方薬店の店頭に置かれていたが、廃業される折に譲り受けた。鱗を砕いて煎じるか粉にして服用するが、薬効成分は未詳とされている。主成分は爪や角と同じく、タンパク質のケラチンであろう。

通経下乳といい於血による無月経、腹腔内腫瘤、又産後の乳脈不通による乳汁欝滞・分泌不全に粉末を酒で服用するか他薬を配合して用いる。他に消腫排膿で癰腫、瘰癧、痰核に、通絡散風で関節痛、肢体のこわばり、運動障害などに用いる。このような珍しい動物薬には霊験あらたかなものがあるのかどうか、予想に漏れず精力剤・媚薬としての利用も知られている。中薬学の書籍には臨床上の要点として「鹹で難堅し走鼠行散し、内は臓腑に通じ、外は経路を透達し、病所へ直達し...」と書かれている。走鼠のごとく、薬効が体のあちこちを回るという意味で、穿山甲の生態から類推する効能・効果ではないかと思う。

 

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