【犀 角】


..............................................................................

動物のサイの角で、鼻前方の長い角を犀角(写真)、後方の短い角を烏犀角という。成分は同じだが、短いほうの烏犀角が珍重される。漢方薬店の店頭に鹿の角などとともに飾るほどに貴重で高価なものだ。サイが絶滅の危機にあるためワシントン条約で保護され、正規の市場には流通していない。写真の犀角はワシントン条約以前の古いものだ。成分は他の獣角や歯や爪などと似たようなもので、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、加水分解によりtyrosine、cystineなどのアミノ酸やthiolactic acidなどが生じる。ほとんど入手できなくなったいま水牛角や亀甲で代用することが多い。清心定驚や涼血解毒の効能を有し、高熱、意識障害、うわごと、熱性の皮下出血、吐血、鼻出血などに応用される。ヤスリや鮫の皮で削りとった粉末1.5〜6gを1日分として、他薬を煎じた液で冲服する。

内側から削り、中心部ほど良質とされる。使い続けると徐々に小さくなり角の外側が残る。器状になったところで細工を施し犀角盃として利用された。飲み物に毒物が混入していると犀角盃の器壁から茶褐色の濁りが生じるという。銀箸の色が変わることで毒物を検知したのと同様の用途だ。また角が多孔質のため空気が出入りし飲み物の味わいが増すとも言われている。江戸時代から伝承される「紫雪丹」という家伝薬(石川県)に犀角が使われた。犀角・羚羊角・沈香・麝香・朱砂・黄金・寒水石・磁石・滑石・硝石・石膏・朴硝・青木香・玄参・升麻・丁香・甘草、これらの薬草を単に混ぜるのではなく、黄金(小判)を触媒に数日かけて加熱、練合などの工程を経て完成する。製法そのものが神々しく高貴薬にふさわしい。熱病・傷寒・酒毒・吐血・食滞などのときに用いた。中医では開竅薬と言い、これに類する製剤は六神丸、求心、奇應丸などがあり、牛黄・麝香・熊胆・蟾酥などの動物生薬のいずれかを含む。

 

INDEX