【夾竹桃】


 

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夏の暑さにも負けず咲き続ける夾竹桃。至る所で見かけるが毒草であり、予備知識をもって眺めると毒々しい紅と冷やかな葉に見えてくる。乾燥や大気汚染に強く枯れる事も少ないので公園や街路樹に利用される。葉の5枚ほどで牛の致死量に達するほど毒性が強い。花、葉、樹皮、根内にオレアンドリンという強心配糖体を含有する。赤花、白花、黄花があり有効成分は赤花が多く白花は少ない。乾燥葉末はジギタリスと同等の効果を持ち心筋に選択的に働き収縮を増強する。速効性があり、作用時間が比較的短く蓄積性はジギタリスより少ない。

夾竹桃科の植物は種類も多くアフリカ、インド、マレーでは古くから矢毒として用いられた。写真の夾竹桃はオレアンドリンを有効成分としているが、この種属を代表する有効成分はストロファンチンで、同じく強心作用に優れ種子から単離し製剤化したG-ストロファンチン注射液(75μg/1ml)がある。内服しても胃で分解するためもっぱら注射で使用する。学生の頃の夏、生薬学の研究室を手伝ったことがある。構内に植えられていた夾竹桃を花、葉に分けて摘み取り、溶媒でエキスを抽出し濃縮する。それを薄層クロマトグラフィーという装置を使い展開する。毛細管現象を利用し、上昇速度の違う成分をスポット分離するものだ。スポットごとに取り出して詳しく成分を調べ、適当な溶媒でまとまった量を単離し、構造や薬理を決定する手順になる。最も単純かつ原始的な方法だが成分の定量も可能だ。製薬会社の試験室を最後に長らく実験とは縁がない。現在はもっと効率、精度に優れた器械が使われているのだろう。

 

 

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