【ジギタリス】


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花壇でしばしば目にすることがあるかも知れない。一年生の草本で別名:キツネノテブクロと呼ばれ観賞用に広く世界中で栽培されている。しかし花の美しさとは裏腹に毒草として有名なものだ。その毒性が医薬品に欠かせないものになっている。葉や実に含有される強心配糖体(ジギトキシン、ジゴキシンなど)は直接心筋に作用し収縮力を増強させる。強力な利尿作用も有するため鬱血性心不全に用いられる。持続的効果があるため蓄積による悪心、嘔吐、不整脈、頻脈、心室細動などの副作用もあり投与には注意と熟練を要する。粉末の1日極量が1.0gと少量で毒性を発揮する。単離されたジゴキシンの1日極量が3mgで、一錠あたり0.1〜0.2mgを含有する製品が発売され、錠剤には割線が施され症状に応じて半分に割って投薬することがある。注射剤は0.25mg(1ml)がアンプルに封入され、用時静脈注射される。

重病人の起死回生薬として「カンフル剤」という言葉が使われるが、これは樟脳から製造されている。学生の頃、薬理学の教授から聞いたのだが、カンフルを注射すると激しい痛みがありそのため患者が動くことがある、それを起死回生薬と錯覚したのだろう。カンフルには直接の強心作用はなく、中枢を興奮させるに過ぎない。ジギタリスこそ直接心臓に作用する本物の起死回生薬だ。「カンフル剤」は起死回生薬の代名詞として定着しているが、「ジギタリス剤」が正しい。

 

 

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