【漢方調剤】


調剤とは、医師・歯科医師・獣医師の処方箋に基づき、医薬品を交付することを言う。温心堂では旧店舗の頃、漢方の保険調剤にも取り組んでいたが、移転後は思うところあって保険薬局の申請をせず、薬局医薬品製造業として営業を続けている。医師などの処方箋に基づかないので調剤ではなく、正しくは製剤という作業になる。

製剤とは、医薬品に粉砕・混合・練合・浸出などの物理的操作を施し、服用に便利で効果の発揮できる形にすることを言う。一般的に調剤・調合などの言葉で表現するので製剤も含めた意味で調剤としておきたい。ここでは漢方煎剤の調剤道具や手順を紹介するが、要は「正しい分量を間違いなく混ぜる事」に尽きる。

【調剤道具】

生薬は生薬問屋から刻んだ状態で入荷するので、そのまま計量し調剤するだけで良い。しかし、葉類で寸切や短冊切のものは混ざりにくいため、包丁やハサミでさらに切って用いることがある。自家栽培し使用するばあいは押切包丁や両手包丁で刻んで用いる。粉末化する際は鉄製乳鉢や薬研で擂り潰し、篩を通して仕上げる。コーヒーミルや食品用のミキサーを利用しても良い。

【計量器】

奥の上皿桿秤を繁用する。任意の重量(1日分)がセット出来て、慣れると天秤部の微妙な揺れで適量の見当がつく。用途や忙しさに応じて上皿自動秤、キッチン用電子秤を用い、手前の感量0.1gの上皿天秤は高価な生薬を1g単位で計量するとき用いる。他に0.01g感量の電子天秤もあるがめったに使わない。

【合匙・丸剤計数匙】

合匙は粉末・エキス顆粒・生薬を計量するのに便利である。計量するものの比重に従い適合する匙を用いるが、慣れると大きな誤差はなく調剤が可能だ。処方中に種子、粉末、下剤、劇薬などがあれば、まず他薬を調剤した後、合匙を用いそれらを加えて仕上げる。

【軟膏用具】

漢方では軟膏はあまり使わないが、軟膏板は2種以上の軟膏を練り合わせたり、軟膏に薬剤を追加・練りこむときに用いる。普通、金属ヘラで練合するが酸性薬など金属と反応するものは角製を用いる。

 


【桂枝湯の調剤】

Rp. 桂皮4g・芍薬4g・大棗4g・甘草2g・生姜(乾燥)1g/1日量

(1)【秤量・A法】

漢方薬は1日分を1包に調剤し、それを煎じ、煎じ液を1日分として2〜3回食間に服用する。調剤は1日分の処方量を秤量し混ぜるだけだ。上記が1日分なのでこれを土瓶、やかん、鍋などで30分ほど煎じる。>>薬草の煎じ方

1日分を調剤するなら生薬をひとつづつ計量するしかないが、普通は数日分をまとめて調剤する。たとえば一週間(7日)分調剤すると、この動作を7回繰り返せば良い。この方法が最も分量の正確な調剤が可能だ。計量した生薬を、写真(4)のように並べた袋に次々と投入する。袋の代わりに舟形の器を用意しそこで混ぜた後、薬袋に移しても良い。計量の際、予め分量を熟知した合匙を使えば秤量の手間が省ける。

(2)【秤量・B法】

漢方調剤の実習では、前項のような方法で製造するが、実務は早さが要求されるので悠長な作業は好まれない。処方薬をそれぞれ7倍量(7日分)秤量する。桂枝28g・芍薬28g・大棗28g・甘草14g・生姜7gをボールに投入し素早く混合する。写真(3)

(3)【混合・B法】

混合したものを、写真(4)のように1日分15gづつ秤量し7包に分ける。この際、15gではなく12gくらいで分包するのがコツである。形が細かく重い生薬は底に残るので、残ったものを合匙で分割する。大雑把な感じがしないでもないが、慣れると調剤誤差±10%はクリアできるはずだ。

生薬については成分の含有量も一定しないし、処方量も医師によって2〜3倍の偏差があるので、おおらかで良いと思っている。ただし、作用の強い生薬や下剤、劇薬などの配合については厳密でなければならない。

(4)【分包・B法】

生姜は辛く、これが偏ると味に敏感な方から嫌がられるので、生姜を残して分包した後、合匙で生姜を加える事がある。同じく、石膏など比重の高いものや竜骨や芒硝など粉末状の生薬は分包を終えた後、合匙で処方量を加える。

(5)【調剤・了】

封を閉じて調剤は終わるが、薬袋に入れて投薬の運びになる。調剤は「正しい分量を間違いなく混ぜる事」と言ったが、処方名や適切な用法・用量などの情報を提供してこそ完結する。

分包の際、温心堂のように紙袋を使う所とティーバッグの所がある。ときには器械で煎じるサービスを行う所もある。ティーバッグは滓を捨てるには便利だが、バラで煎じるより抽出効率が落ちる。バラでそのまま煎じて最後に茶漉しで滓を去るほうが好ましい。

 

 

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