【条虫駆除】


鶏の条虫/体長50〜60p

 

【檳榔子による条虫駆除】

一般養鶏はケージで行うが、自然養鶏や闘鶏、観賞鶏など地面で飼われる鶏は寄生虫の対策が課題になる。条虫(サナダムシ)は地面に生息する蟻、ゴミ虫類などの小昆虫を中間宿主としてそれを食べた鶏の体内で成虫となる。早いもので2週間、一般的には2ヵ月前後で成虫化し、虫体の分節が糞便とともに排出され、そこに詰まった虫卵を再び小昆虫が食べることで循環する。20年ほど前、闘鶏の条虫について相談があった。一羽の闘鶏に平均2〜3匹、体長50〜60cmくらいの条虫が寄生し、それによって食欲や闘争能力が落ち苦慮しているという。新薬は使いたくないとの事で、石榴実皮、檳榔子、雷丸、南瓜子、榧子(カヤの実)などを提案した。サルノコシカケの一種、雷丸はプロテナーゼという酵素を持ち、虫体のタンパク質を分解し排出する作用があり、これを取り寄せることにした。届くまでに檳榔子を使って頂いた。これは虫体を麻痺させ腸管運動を促して排出させる生薬で、結果的にこれが予想以上の効果を発揮した。後に取り寄せた雷丸は異常に硬質でこれを粉末にするのは困難であり、すでに得た檳榔子の著効が他の介在を許さなかった。

檳榔子10gくらいを300〜400mlの水で30分ほど煎じ、数羽の鶏に与えたところ、30分〜1時間ほどで虫体の排出が始まり、ほぼ完璧な駆虫に成功した。200羽の闘鶏を飼育されていたので次々に試み、ほぼ100%近い駆虫率だと絶賛された。駆虫効果を高めようと檳榔子を濃くして与えた数羽が死んでしまった。しかし、試行錯誤を経てほぼ使い方のコツがつかめたようだ。その後、人づてに広まり近隣の闘鶏愛好家がしばしば檳榔子を求めて来店するようになった。いつの頃か煎じ薬は粉末に変わり、粉末1gを水で溶いて与える方法に変わっていった。20年も経つのに相変わらず檳榔子末と闘鶏愛好家達との付き合いが続いている。

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【付記】この記事をサイトに公開したのが2011年4月だった。いままで近隣の愛好家に利用いただき、その数10人ていど。皆さんがほぼ100%排出したといわれるので、そのように記載していた。公開後、この記事を参考に所謂、追試を行った方も居たものと思う。2014年の春、1本の電話を受ける。「100%どころか全然効かない」という内容だ。分量や回数など尋ねたがやはり効いていないようだ。新薬でもうまくいかず、うまくいかないと獣医や薬屋は分量、回数など聞いた後、決まって「薬が効かない例もある」と答えるらしい。私も例に漏れない返事をしてしまったわけで、薬は確率の下で運用するので100%と書いてしまったことを後悔した。記事は書いた当時の現状を報告したもので、修正はしないが、閲覧いただく際にはご留意いただければと思う。(2014・9)

 

 

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