単調な月曜、単調な火曜、単調な水曜・・・・・・・・・・・・そして単調な日曜。
人はありふれた時間を繰り返しながら、年老いて行く。

仕事場のディスクに座り、PCのスイッチを入れる。いつもと同じ画面。
また1日ここに座って、図面に手を加えていく。
「なぁ、聞いたか?アイオロスの次のフライトで、ゴドーがキャプテンに内定したらしいぞ。」
同僚のひとりが、カイトの肩をつかんだ。
「そうか・・・・」
「なんだそっけない返事だなぁ。ゴドーとは確か同期じゃなかったか?やっぱり妬けるか?」
「バカ言うなよ。」
なにげない素振りで、画面を見つめる。
妬けはしない。同期とはいっても、もう既に二人の住む世界は違っていた。
(この足の怪我さえなかったら・・・・・・・)
その思いは、カイトの心の奥底をさいなんだ。
怪我さえなかったら、ゴドーより先にキャプテンになっていたはずだ・・・と。

その日も、カイトは仕事場からまっすぐ人形館に足を向けた。
もうあれから何度ティアの元を訪ねたかしれない。

男に500ルーク支払い、誰もいない館内のティアの陳列室に入る。
ティアはこの前見た時と同じ場所に、同じ姿勢でうずくまっていた。

「ティア、また来たよ」

「またきたね」

「うれしい?」

「うれしいわ」

最初はオウム返しだったティアも、毎日話しかけるうちにどことなく会話めいた言葉に
なりつつあった。

「ねぇ、ティア。あいつがキャプテンだとさ。」

「だれ?あいつ」

「同期のゴドーがだよ。やつとは親友だが」

「ゴドー?」

「ほんとは心から祝ってやらなきゃならない、それはわかってるんだ。でもさ、
・・・・ティアには言ってしまおう。嫉妬してる。やつに嫉妬してるんだよ、俺は。」

「しっとってなぁに?しっと?」

「はは・・・・君にはわからないね。」

「わからない。しっと、なに?ティア、わからない。」

「いいんだよ、そんな言葉、知らなくて」

カイトは低く笑った。そして無性にあのティアのラベンダーの髪に触りたくなって
腕を伸ばしたが、硝子の堅さが彼の指先を阻んだ。
こうしてティアと会話していると、魂を持たない相手と話している事実を忘れる。
妻にも話さぬ心の卑しい部分も、何故ティアになら話せてしまうのか。
自分が宇宙(そら)を飛べなくなった事は、誰のせいでもない。運が悪かっただけ。

「運だと・・・・?運なんてくそくらえだっ」
そう吐き捨てると、カイトは硝子ケースを拳で叩いて、部屋を出た。

「カイト   カイト   また 明日。」
ティアのつぶやきは、カイトの耳には届かないほど小さかった・