自意識

わたしの中の
標本箱から
『曖昧(あいまい)』を取り出してみる
こんなにもあった
名付けられない感情

恥ずかしげもなく
ぽかんと口を開けて
エサを待つ
食虫植物に
なりさがる

わたしの自意識は
川面にたゆとう

ただ とうとうと
ながれゆく

黄昏は
逢魔が時と
人が言う
魔に逢いたいと
ひとりごち

泣き叫ぶ風と
おおい隠す雪と
突き刺す氷
それらにはぐくまれて
北の魂がある

もうそろそろ
葬ってもいい
自分の中の
なんの役にもたたない
自意識


饒舌に人生を語る
あなたはきっと
わたしの痛みに気づかない
優しさなんか
もう探さない

固くなったパンと
一冊の本
古くなったあめ玉と
自分だけの時間
その日暮らしがしてみたい