◆◇◆ 備前焼の景色(焼色・模様)の説明 ◆◇◆
 
◆備前焼の色いろいろ◆

備前の粘土は他の窯業地の粘土と比べ耐火度が低く、焼成による収縮率が高い為、釉薬をかけなくても水を漏らさなくなります。
この『無釉焼き締め(むゆうやきしめ)』が備前焼の最大の特徴です。
備前焼は、燃料の赤松などの薪による『灰』・粘土に含まれる『金属』・窯詰め・焼成など、さまざまな要因により多彩な発色をします。

無釉焼き締めの備前焼とは、炎によって描く焼物といっても過言ではありません。



■胡麻(ごま)

薪を燃料とした窯では、焼成中に薪の灰が器物に降り積もります。その灰は土と反応し、高温で釉化(ガラス化)します。これが「自然釉」です。
備前ではゴマを振りかけた様な自然釉の状態をさして『ゴマ』と言い、現在は自然釉そのものを『ゴマ』といいます。

                   

■カセ胡麻(かせごま)

ゴマの中でも、融けきらずに焼きあがったものを「かせゴマ」といいます。
特に釉ちぢれになったものを「メロン肌」「えのき肌」ともいい、珍重する向きもあります。


                 

■玉垂れ(たまだれ)

ゴマが完全に融けて、筋になって流れ垂れたものを、特に『玉だれ』といいます。
応安四年(1371)今川了俊の『道ゆきぶり』、「かゞつ(香登)といふさとは、家ごとに玉だれのこがめと いふ物を作るところなりけり」という記述は有名です。

                  

■焦げ(こげ)

灰や熾きが融けきらず、カーボンにより黒く発色したものです。
ゴツゴツとした質感があたかも焦げついたように見えるので『焦げ』と呼びます。
         

■被せ焼き

徳利などの口を囲うように、酒呑などを被せて焼くと、被せた部分だけが灰が掛からず、地肌のままの発色となります。
このコントラストを『被せ焼き』と言います。

■牡丹餅(ぼたもち)

元々は、作品同士を積み重ねて窯詰めをし、焼けムラが模様として抜けでたもの。
お皿などの上に別の物を乗せて焼いた痕跡が、灰が掛からずに丸く発色する為、『牡丹餅』になぞらえて『ボタモチ』と言います。
現在は、耐火度の高い粘土で作ったせんべい状の『ボタ』をのせて、意識的に模様を作る事もあります。

■抜け(ぬけ)

窯詰めでのモノ同士の組み合わせにより、部分的に灰が掛からず、炎が直接当たらない場所ができます。
その部分だけ地肌そのままに発色して、周辺とコントラストができるため『抜け』といいます。
大きい作品の前に小さい作品をくっつけて詰めたり、耐火度の高い土で作った煎餅状のものを立てかけたりして意図的に模様を作る事もあります。    
          

■緋襷(ひだすき)

直接炎があたらない部分で、ワラのアルカリ分と、素地の鉄分が反応して出来た緋色の襷(たすき)模様。
窯詰めの際に、作品同士の溶着を防ぐ為に、ワラをはさむ事によって得られます。
窯や詰め方・焼き方によって、赤・青・金・銀・黒とさまざまな発色となります。

          

■緋色(ひいろ)

地色が赤く発色している部分を『緋色』と言います。
特に還元焼成での赤紫色を『紫蘇色』といいます。


■自然桟切(しぜんさんぎり)

灰や熾き(オキ)に接触した部分だけが強還元焼成になり、色変わりの発色をしている部分を『自然桟切』と言います。
窯の中のロストルという火格子(=桟の切ってある場所)で良く発色する為、『桟切り』と言います。
人工的な『炭サンギリ』に対して、自然な発色によるものは特に『自然サンギリ』と言われ区別されます。

              

■桟切(さんぎり)

窯の焼きあがりの時に、作品の周りに炭を投入します。炭の強還元炎と一酸化炭素による還元によって、部分的に白〜青〜黄とコントラストの強い色変わりの景色ができます。
炭を入れる為、『炭サンギリ』ともいいます。
自然サンギリと原理は同じながらも、雰囲気が異なります。
窖窯(あながま)では炭を入れないので全て『自然桟切』となります。


         

■転がし(ころがし)
作品を横倒しにして窯詰めをするので『ころがし』。

単に『窯変』『ころがし』と言えば、『自然サンギリのころがし』を指します。
燃料の松割木の灰や熾き(オキ)に埋もれ、直接火があたらない為に、様々に発色し、変化します。
黒くオキが焼き付いた部分を『こげ』とも。
破損、溶着などが多く、無傷で窯から出るモノが少ない為、珍重されます。


           

■石爆(いしはぜ)

粘土に含まれる石が焼成中に粘土との収縮差によって爆ぜて露出したものです。

備前では自然のアクシデントがもたらした景色と捉え、特に美を見出し珍重しました。

■青備前(あおびぜん)

火が直接当たらず、強還元状態で、また冷却還元になったものは、全体が明るい青〜青〜黒に焼けあがります。
これを青備前といい、数ある焼き色の中でもコロガシにならんで数が少なく珍重されます。


           

■塩青・食塩青(しおあお・しょくえんあお)

青備前にはもうひとつ、『塩青・食塩青』とがあります。
焼成中、食塩を投入し塩からの揮発したアルカリを釉薬状に素地に纏わりつかせ、冷却還元によって青く発色させるもので、塩釉の一種です。
表面を釉化させるので滑らかで、青備前と区別して『塩青・食塩青』と言われます。


■金・銀(きん・ぎん) 

桟切りなどの景色の周辺や、青備前のヒダスキ部分などが、金色や銀色に輝いて発色することがあります。
水分の多い窯や季節に多く出るようです