夜を飛ぶ翼
今でも君のことを思い出す
目を伏せて 哀しそうに
微笑んでいた君の横顔
細い手脚が夜空に溶けて
消えていってしまうよ
悲しい夢を反芻する獏の群れ
眠れない夜を過ごす羊たち
今も 君が 好きだ
その瞳が 鼻筋が 口許が
長い髪と項が
子供のように瞳を輝かせてはしゃぐ君
ふと恥ずかしげに頬を染める君
口づけを交わすときの睫毛の様子
蝶の夢を見る人と
人の夢を見る蝶と
今も あの楽しかった頃
二人の時間を夢に見るよ
でも夢の終わりには
君が何処かに消えてしまうか
二人とも死んでしまうんだ
夜 微かに光る天使の卵
殻の中で夢見る白い翼
こんなにも世界は平穏
僕の前に君はいないのに
こんなにも世界は平穏
それが悔しくて
もっと深く眠ろう
君どころが 僕が何者かさえも
忘れてしまうまで
この号にて『詩芸術』は一旦休刊となる。この前の号の交流欄に、甲府の岡田正之さんという人から(僕を含めた五名宛に)ファンレターらしきものが投稿されていたものの、返事もできず仕舞い。
生活の環境も変わって、これが一つの潮時というか、以来あまり詩作をしなくなった。惜しい、かな。