水売りの夢
"Hemm seeyaah"
チャドルを纏った娘が言った
土の家の並ぶ片隅
熱い砂漠の街角で
"Hemm seeyaah"
吸気音の発声
不思議な異国の言葉
「ありがとう」の意味だと
ベールの下 彼女の連れが言う
伏し目がち 長い睫毛 黒い瞳
素焼きの杯 手渡す細い指先
陽炎の中で出会った淑女
砂に掻き消える蜃気楼か
「ヘム・スィーヤー」
「ヘム・スィーヤー」
何度も繰返してみるが
僕には上手く話せない
マホメット以前に死に絶えた
もう地上には残っていない言語
あれから一度も
彼女たちには会っていない
タイトル通り夢の中の出来事。妙にリアルだったので、その言葉は目覚めてすぐ書き留めた。
『ヘム』で息を飲むような感じに吸いながら音を出し、『スィーヤー(ハ)』とゆったり吐き出す感じ。後半、アクセントは『ヤ』の上。ほんとに難しい。
果たして息を吸いながら発音する言語が実在する(した)のか、僕は寡聞にして知らない。