舟の上に座る和服の君は

  髪を結い 能面を着けて

  月の光の中 水面を滑り

  音もなく遠ざかってゆく



  僕は澱んだ水の中

  深く沈んでゆく



  君はその仮面の下で

  泣いているのか 笑っているのか

  どちらだろうと それさえ知れば

  こんなにも苦しまずに済むのに



  僕は水底で腐る

  藻の絡みついた手足



  遠ざかる舟の灯も

  月光に揺れる波も

  もう何も見えない

  何一つ 見えないよ



  身体が腐れ果てた後

  僕の魂は小さく青く

  水底で微かに光って

  君を 君だけを待っている



  ねえ 戻っておいで

  百年 千年 一万年でも

  僕はじっと 冷たい

  この水の底で待っているから



  待ち続けて

  い るから


 未だに、その人のことを考えてますけど。
 ただ未練がましいだけかも。


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