渡る


  僕らは名も知らぬ船に乗り

  海原を運ばれてゆく

  長い長い航海



  想いは遥か異国の

  霧に抱かれた遠い港へ

  未だ見知らぬ街並みが

  懐かしい場所と思える不思議



  見渡す限りの水平線

  冥い海の底には

  月や星が輝き

  薄紅の空には

  珊瑚や海星の彩色画



  デッキの上では

  僧や軍人 物売りや恋人たちが

  日がな一日同じ目をして

  黄昏の水平線を眺めている



  いったい船は

  進んでいるのか揺蕩っているのか

  こうしていると鬱々と

  深い闇へといざなわれる



  気付けば まだ船の上



  あの遠い港の灯を

  目にするのは いつ


 我々は何処から何処へ行く何者であるのか。


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