白い糸の伝説(I)てぐす


  人の赤子ほどの巨大な蟲が

  盛んに糸を吐き出している

  あれはイーハトーヴの幻影か

  視界一杯 犇めくてぐすの群れ



  その純白の図太い糸は

  蟲共の体温と湿度を孕んで

  建物ビルの谷間 家々や尖塔を渡り

  乾いた街を包んでゆく



  網に絡め取られた都市

  死んだ魚のように静まり返る

  数百万の輝く鱗も光を失い

  もう海の夢さえ見られない



  満月は中空に留まっている

  繋ぎ止めた糸は日毎に数を増し

  今はここからさえ見える太さに

  月面へと行き来するてぐす達の影



  オールディスの描いた植物ツナワタリ

  或いはカン陀多の登る蜘蛛の糸か

  太古むかし 地球が天から吊るされていた

  ロープの名残であるやも知れぬ



  もう何も見えなくなった

  全てを埋め尽くした白色の他は

  今 この惑星ほしも動きを止め

  巨きな繭の中 蟲の眠りに落ちてゆく


 珍しくI、IIの連作になってたりする。
 カンダタ……カンの字は牛偏に′嚊。


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