月光浴の誘い


  この日常の表に裏に

  絡み合っている言葉たちを

  夜の底に沈殿させ

  集めてグラスに注ぎ

  一息に飲み干そう



  潮騒が聞こえたら

  それが合図

  涼風に吹かれながら

  屋上に上るんだ



  背筋せすじを伸ばして

  顔を上げよう

  尾テイ骨の辺りから

  螺旋を描いて月が昇る



  月はぶんぶんと

  唸りを上げて

  狂ったように 町へ

  白光を投げ掛ける



  目を落とせば

  周り中の建物の上

  月の光を浴びようと

  人々が集う



  皆僕と同じ

  影を失くした人たち

  背を伸ばす人と

  蹲る人

  月を見上げている



  張詰めた光は

  螢光ランプの

  淡い青緑の夢

  都市の上空に拡がる

  乾いたビデオ映像



  光の矢が

  肌を刺し貫く

  束の間 心拍に合わせ

  僕たちの影が伸びる



  影は混じり合い

  もう自分と他人の

  区別さえつかない

  月は頭頂を極めている



  ここは地上か?

  月面なのか?

  突然



  夜が剥れた


 尾テイ骨のテイの字もJISに無い。悔しいなあ。“骨”偏に“低”の旁のほう。
 ゼルダに『小人の月光浴』って曲ありました。写真集にもそういう題のがあった気がするけど。日光浴に対して月光浴って発想はありがちかも。


[トップページへ] [ひとつ上のページへ] [前に戻る] [次に進む]