窓から


  僕達は 各々の

  真っ暗な部屋の中から

  二つずつの窓を通して

  この世界の昼と夜

  日常の様々な物を眺めている



  僕が 君の窓から

  君のいない世界と僕を

  眺められないように

  君は 僕の窓から

  僕のいない世界と君を

  眺めることができない



  一人一人の角度で

  他の誰にも知り得ない

  一人一人の宇宙が展開する

  毎日 毎秒 一刹那毎





  このごろ

  ふと 自分の部屋のほうを

  振り返る事がある

  真っ暗だと思っていたのに

  狭い部屋だと思っていたのに

  そこは茫洋と広がっていた



  一歩退くと

  今まで見ていた世界は

  裏返って 小さな部屋

  その外側の沢山の窓から

  中の薄闇を見ているのは

  僕や 君や 全ての人の姿をした

  たった一人の僕自身



  百億の窓から見えるのは

  昆虫の心象風景

  複眼の万華鏡像

  あらゆる角度からの

  立体モザイク模様の地球このほし



  ああ 昨日僕が考えていた事を

  もう君や 世界中の人達が

  思っているじゃないか

  現実こちらの不思議も

  今は至極当たり前の話



  百億の窓から眺めたら

  やっと世界が見えはじめた


 窓というのは眼窩の謂であることはお察しの通り。世界人口が五十億を過ぎた頃だっけ。
 自身の唯我論的思索の一つの結論ではあるわけ。それさえも本当かどうかわかんないんだけどね。


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