退行


  たった今気付いた

  何時か見た幻覚ゆめの意味

  大地から溢れる太鼓の音

  未だに耳についているあの音は

  母の胎内で聴いた鼓動

  懐かしげな木造りの家は

  子宮だった



  未だ僕の胸に残る地母神ゲーのドラム

  遠い遠い記憶

  暖かさを暖かいとも

  暗さを暗いとも感じず

  恐怖も不安も

  希望も後悔もなかったあの頃

  今の僕にはワカらないコトバで

  夢を見続けていた



  羊水は海へと繋がる

  個体の記憶は原初に還り

  一つ一つ 全ての細胞は

  太古の海を感じている

  蠕動 浮遊

  泡 泡

  今 ここにいる

  ただそれだけの感情

  子宮は地球へと繋がる



  或いは夢は

  未だに続いているのだろうか

  今まで目の前に在ると信じていたものたち

  森羅万象が 突然撥条ぜんまいの戻るように

  回転して 形を失くし 収束して

  一条の光となって

  目覚めの時 新たな誕生を迎えるのか



  もしも これから

  生まれなければならないならば───


 『妄想夜』でも書いた“世界”への不安。すべては胎児の見る夢ではないか、というのは夢野久作も『ドグラ・マグラ』で書いている通り。
 ここにも出てくる撥条仕掛けの世界というのはタルホも書いてたっけね。


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