妄想夜


  床に座って 脚を投げ出し

  ふと伸びをした その時

  足の方から真っ逆さまに

  星空の彼方へと落ちて行く

  虚空やみの奥へ どこまでも深く

  目も冥むほどのスピードで



  宇宙は拡がり続けている

  惑星は奈何しようもなく冷えて行く



  ───ああ 雨だったんだ

  舗道があんなに濡れているのは



  自分が此処に居る事さえ

  気が付かないほど静かな夜

  人形でも時計でも

  机や本棚 読みかけの本でも

  誰でも良いから僕に話しかけて

  夜の裂け目に消えないうちに



  今頃宇宙は

  孤独を思い出しているんだね

  例えば僕とか世界とか

  物質とか時間とか概念とかの

  自分の中に組み上げた絵空事に

  夢中になってる自分に気付いて



  突然フィルムの逆回しみたいに

  世界の撥条ぜんまいが弾けて戻って

  今まで何かだった全てのものが何でもなくなっちゃったら

  ちょっと 淋しいよね


 こうした危惧は今も常にある。目の前のものは、本当に見かけ通りそこにあるのか。


[トップページへ] [ひとつ上のページへ] [前に戻る] [次に進む]