野望の夏

著    栗本薫
発行  角川書店

26才の平凡なOL夕香。彼女は18の時の失恋の痛手を抱えたまま、男性不信に陥っている。
そんな彼女が行きつけのスナックで正体不明の若い男アキと出会ったことから、運命を変えていく。
アキは「獣のように美しく」、炎熱のように荒々しく、夕香を翻弄し狂わせて行く。そしてそんな二人の
行き着く先は・・・・・・・

私は栗本薫が好きで、彼女の本はほとんど読んでいる。
でも時々この人は「へ?」って作品書くんだよね・・・・・・・
私にとってこの作品は「へ?」の部類に入る。
だいたいちと文章がくどい。
「狂った夏」「堕落していく私」そんなキーワードがとっかえひっかえ、手を変え品を変え登場してくるんだけど、
そんなの栗本薫くらいのプロなら、さらっと流しても充分表現できるんじゃないの?
林家三平の「いまのはなんで面白かったかというとー」みたいなもんで、
あまりくどいと読者はばかにされてるような気分になる。
確かにもともと文章回しにくどさのある作家なんだけどね。今回は特に鼻についた。

で、タイトルの「野望」なんだけど、
『けどいまに見てろよ、その教育もない、頭も悪い俺がみんながあっというようなどでかいこと
してやるからよ。世間があっというようなことをよ。』
ってアキの言ってるどでかいこと、世間があっということってのが、
アイドル歌手をこましてその写真撮って事務所をゆするなんてレベルなんだもん。
なんとなくおそまつ感が否めない。
結局「教養が無く、頭の悪い」男が考えるどでかいことっていうのはこんな程度だってことを
作者は言いたかったんだろか・・・・・・・
それだったら、タイトルに掲げた「野望」が浮いちゃうんじゃないの?
私の勝手な思いこみなんで、恐縮ですが
「美しい男」の「野望」っていったら、やっぱしもっと派手に銀行強盗やったり、冷酷無比に殺戮を
繰り返したりするもんでしょ〜
それが、アイドルこまし?ゆすりたかり?野望?けっ、ちゃんちゃらおかしいや。(爆)


で、ラストにどんでんがえしがあったりするんだけど、それも途中でネタ割れしちゃってるしね。
こんなにくどいくらい色んなキーワード出してきてるわりには、ラストでなぜ夕香がああいう行動に
出たかってことで充分に読者を納得させていない。

思うにこの作品は作者の実験小説ではなかったろうかと。
過激なSEX描写を描くことにてらいがあった作者の突破口的作品ではなかったか。
実際あとがきでこんなことを書いている。
小説を書く者は「ストリッパーかピエロ」でなくてはならないと。
「最後の一枚を脱げないストリッパーになんの価値もない」と。
けだし、名言ですな。
作者は「野望の夏」で最後の一枚を脱いだ・・・・・・のかどうかは、どうぞ読んでみてください(笑)

何度も言うようですが、私は栗本薫の文章が大好き。
私自身、いろんな意味で彼女の影響を受けている。(わ・・・・おこがましい・・・・・)
でも時々めっちゃくちゃこきおろしたくなるんだよね。これって愛情の裏返しかしら・・・・ぼそ。
すみませんf^^;)>栗本先生←見てねーっつーの。

あ、でも、読みはじめて最後までいっきに読んでしまった作者の文章力、やっぱし大作家だな〜と
思いました。
おわり