果実酒
お前はいつからそこにいる
饐えた匂いのする蔵の中で
息をひそめながら時期(とき)を待つ
珠玉の果実たち

澱んだ琥珀の精粋が ちろりとひかる

お前は幾度の冬を越した?
笑いさざめきながら実を摘んだ娘たちは
老婆となりはて
ガラス壺は すでに輝きを忘れた

きっとお前はエーテルのように
人の身体を麻痺させてしまうのだろう

無邪気な果実から
妖しい甘露に変わるまで
悪女のように眠れ